ゲンジ蛍の点滅秒数に異変が?            (有)グッピー 山田 洋

 2014年、長野県及び近県のゲンジ蛍点滅ワンサイクルの秒数(以下点滅秒数と記す)に異変が起こったので、調査を始めた2007年からの、点滅秒数を発生地別に表記します。
 明らかに異変と感じた発生地は、長野県辰野蛍童謡公園, 長野県箕輪町恩沢川蛍の里、長野県上田市弧塚ほたるの里、山梨県韮崎市小田川蛍の里です。特に長野県辰野蛍童謡公園, 山梨県韮崎市小田川蛍の里は、例年と明らかな違いがありました。  (標高は参考数値で正確ではありません。)

   長野県辰野蛍童謡公園 標高730m
 
十分考え尽くされた人口水路に滋賀県産の西日本型ゲンジ蛍を定着。蛍発生数の多さでは日本トップクラス。2007年から2013年までの7年間、点滅秒数2.2秒の、一タイプが生息、ゆえに同時明滅が見られた。
 ところが、2014年は、今までと全く違う点滅秒数を示した。(以下、測定した年月日と点滅秒数を記す)

        調査結果(赤字は点滅秒数)
2007年   2.2秒   点滅秒数は2.2秒弱の一タイプ、同時明滅が観られた。
2008年   2.2
2009年   2.2
2010年   2.2
2011年   2.2
2012年   2.2
2013年
 6月15日 3.2秒(1匹) 蛍発生初日であったことから、舞う蛍はほとんど無く、植物に止まって点灯、もしくは、点滅しても不安定で、測定不可。偶然一匹の舞って点滅する蛍を発生地境界線上で発見、3.2秒を示した。近くの発生地から飛んできた個体とは考え難く、(理由 他地域の発生は一~二週間後)たった1匹だったので、たまたまの偶然と思い気にはしなかった。
 6月21日 2.2 その後の調査は例年通り2.2秒の1タイプのみだった。
2014年 (以下測定秒数の秒は削除
 6月13日 3.5 3.6 点滅秒数が例年と異なる。植物に止まって、点灯し続ける個体が多い(発生初期段階)。再調査が必要。
 6月18日 2.9 3.0 3.1 3.2 3.4 再調査をしたが、2.2秒は無し、同時明滅が見られない。
 6月20日 2.7 2.8 2.9 3.0  2.2秒は無し、再調査の必要あり。
 6月23日 2.6 2.7 2.9  2.2秒は無し。
 6月24日 2.6 2.7 2.8 2.9 3.0  2.2秒無し。
   2014年は、例年と異なる点滅秒数を示したので、再調査を何度か行ったが、0.4~1.2秒長く、その理由は解らない。前年確認した、1匹の3.2秒と関係があるのか?

石積で作られた人口河川

     

2015年
 6月12日 2.4 2.6 2.7 2.8  舞う蛍が少ない。連続点灯が多い
 6月13日 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 総体数は例年より、かなり少ない。.同時明滅が見られない
 6月15日 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5
 6月18日 2.8  強風 小雨 ほとんど舞わない
 6月26日  小雨 測定できず
 6月27日 2.2 2.3 2.4 2.7
       2.4 2.5 2.6 2.8 3.0 3.1 (.蛍発生地の真ん中を横切る天竜川)
 




    山梨県韮崎小田川蛍の里 標高434m
 東日本型ゲンジ蛍の生息地。田んぼに供給する水を流す古い石組の小さな河川。もともと自生していた蛍を保護増殖して放流しているとのこと。

        調査結果
2012年   
 6月15日 4.0 4.1 4.2 (4.4) 典型的な東日本タイプで同時明滅が見られる。
2013年
 6月17日 4.0 4.1 4.2  昨年と変わらない東日本タイプ、同時明滅あり。
2014年
 6月13日 3.6 3.7 3.8 3.9 4.1 4.3 例年と異なる点滅秒数の蛍が多い。再調査が必要。
 6月19日 3.5 3.8 3.9 4.0 再調査を行ったが、前回とほぼ同じ結果だった。

 もともと東日本型ゲンジ蛍の生息地。親を捕獲、産卵孵化飼育して11月頃幼虫を放流しているとのこと。
 何故か、昨年はいつもの年と異なる点滅秒数を示す個体が現れた。複数タイプが同居する長野県に似ている。原因は全く分からない。

     

 2015年
 6月10日 2.9 3.0 3.1 3.2 
 6月19日 3.9 4.1 4.2 4.3 4.4 気温が低い



    長野県箕輪町恩沢川蛍の里 標高700
 壁面が石垣でできた河川,左右には樹木が茂り湿度が高く、蛍が舞い上がれる良い環境と言える。以前は蛍が自生していたとの事だが、激減し、西日本型蛍を導入、増殖を繰り返し現在に至ったと思われるが、定かではない。
 河川の横に蛍増殖水路が複数造られている。
 測定開始当初点滅秒数が2秒に満たない蛍がいて驚いたがたが、今年、さらに1秒を切る蛍が現れた。ひょっとしてヘイケ蛍?
 仮にゲンジ蛍だとしたら、人為的な増殖が長年行われると、このような現象が起こるのだろうか?不思議である 長野県上田狐塚は人の手が加わっていないのに、同様の現象が見られた。

        調査結果
2011年
 6月29日 1.5 1.6 1.7 1.8 1.9 人為的な繁殖で1.5秒、1.6秒が生まれたのか? 
2013年(2012年のデーターは、パソコンの故障で取り出せなくなった。)
 6月29日 2.2 2.3 2.4 2.5 2.7 2.8 昨年とは違った点滅秒数を示した 
2014年
 6月27日 0.9 1.0 1.2 1.3 1.4 1.6 1.7 1.8 1.9  この点滅秒数は考え難いが事実だ。0.9秒はヘイケ蛍と疑いたくな るが、ヘイケは0.7秒、また舞い方や明るさに違いがあるから間違えはないと思うが、捕まえて調べたわけではな いので無理押しはできない。
 2014年の0.9秒はゲンジ蛍の点滅秒数を大きく外れているが、測定方法やストップウォッチに間違いや、くるいは無かった。
2015年
 6月15日 2.4 2.5 2.6  同時明滅が見られた。





             
     長野県上田市弧塚 標高514m
 下流は底コンクリート、上流は石済みの自然河川。この地に自生している蛍で人の手が加わっていないと思われる。長野県の自然発生地に見られる複数タイプが同居。
 2014年の秒数は異常である。長野県箕輪町恩沢川蛍の里もよく似た現象が見られた。

       調査結果
2012年 
 6月22日 3.3 3.5 3.6 3.7 3.8 4.1
 7月02日 2.4 2.5 2.6 2.7 
 7月07日 2.8 2.9 3.0
 7月08日 2.2 2.8 3.0
 7月09日 2.9 3.1 
 7月13日 2.2 2.3
 7月14日 2.2 舞っている蛍が少なかった。
 測定日が変わるたびに、点滅秒数が異なった。発生当初から終了までの全部を測定していないから、発生期間はさらに長いはず。
 たまたまの偶然か、東日本型.中日本型.西日本型の順に発生している。発生期間が長いのはそれが原因か?
2013年
 6月28日 2.7 2.8 3.0
2014年
 6月26日 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 再調査が必要


 比較的大きな河川、蛍の発生数は多いが、決してきれいな水とは言えない。またごみが多い。
 生活排水が入り込んでいると思われ、時間によって白濁、泡立っていることがあるが、ゲンジ蛍は水が綺麗な場所に生息すると言われているが、ここを見る限りそうとも言えない。CODやBODを計って診る必要がありそう。たぶん汚いのは特定な時間帯で通常は綺麗であると思いたいが。
 蛍発生から終了までを通して測定していないので、正確な蛍発生期間は解らないが、20日を超えると思われる(通常ゲンジ蛍の発生期間は10~14日)。発生日と点滅秒数に傾向が見られるとしたら面白い。この年は、東日本型が早く発生していた。発生から終了までを連日測定すれば、新たな発見が期待できると思われるが、諏訪から毎日通うのは無理がある。地元の方の協力を期待したい。
             
2015年 6月12日 舞っていないが2匹確認。
 6月14日 数が少ない。舞わない。     
 6月19日 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 4.2 4.4 4.8
 6月23日 3.7 強雨後 低温 舞わず
 6月24日 2.1 2.2 2.3 2.4 
 6月26日 3.5 3.8 3.9 4.0 4.1 4.3 4.4 4.6  気温15℃
 6月28日 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 3.0 3.1 3.4 3.5  気温18℃           7月01日 2.7 2.8 2.9 3.0 3.4  気温23℃            
 7月03日 2.4 2.6 2.8 3.0 3.1 3.5 3.7  気温20℃ 
 7月06日 2.6 3.1 3.6 3.7 4.0  気温17℃
 7月10日 2.5 2.6 2.7 3.0 3.4  気温22℃
 
7月14日 3匹確認 舞わず  気温24℃

  

 



             調査した他地域の結果
     諏訪市角間新田 標高1010m
 自然災害に伴う復旧工事で、短い個所に数個のダムが作られ、このダムで幼虫の遡上がストップ、大量発生していると思われる。
 ダムの下流は自然河川。
中日本型と東日本型、その中間型が同居、長野県のゲンジ蛍自然発生地は複数タイプが同居しているのが特長、その典型的なスタイル。
 ここでは西日本型が見られないが、標高が高い事が理由か?
 東日本型は気温が低いと点滅秒数が長くなるようだ。

      調査結果
2008年
 6月24日 中日本型
 7月08日 東日本型 
2009年 
 6月24日 中日本型(3.4)
 6月27日 3.4
 7月05日 4.0 4.4 4.6 4.8 5.0(肌寒い)
 7月13日 3.6
2010年 
 7月07日 3.0 3.2 3.4 3.5 3.6
 7月09日 4.0 4.2 4.4
2011年
 6月27日 2.7 2.9
 7月05日 3.8 4.0 4.4
 7月12日 3.2 3.3 3.4 3.5
2013年
 6月27日 雨で測定できず
2014年
 6月29日 5.5(気温がかなり低い)
 7月05日 4.3 4.0 4.7 4.0 4.6 3.6 4.4(気温が低い)
2015年
 7月02日 3.6 3.7 3.8 3.9 4.0 4.1 4.3 
 7月10日 4.2 (少し寒い)



      諏訪市大和 標高760m
 諏訪湖に極近い人家が密集する中を流れる小さな人工河川だが、石垣の場所がある。発生数は少なく10匹に満たない年もあった。
 個人的に保護活動が行われていたようだが、健康上の都合で行われなくなり、絶えてしまった。幼虫の放流を行い保護すれば、復活すると思われる。西日本型と中日本型、その中間型が同居する長野県スタイル。

2009年  3.4
2010年  蛍は確認したが、舞わないため測定できず。数が少ない。
2011年
 6月27日 2.0 2.1 2.2
 7月05日 2.9
2013年 蛍確認できず
2014年 蛍確認できず、絶滅したと思われる

 人家の間を流れる河川上流方向    下流方向      目地をかってない石垣

       

 2012年の調査データーがパソコンの機械的故障で取り出せなくなり、穴が開いてしまったが、パソコンには残っているはず。パソコンの達人に復活していただきたいと思っている。
 2年間のデーターから、西日本型と中日本型が確認できたが、東日本型もいて当然の場所である。
 諏訪市田辺ゼギの蛍を増殖して放流すれば、同一遺伝子の蛍が再生できると思われる。カワニナの繁殖状況を見て、行ってみた方が良い。

    



      諏訪市普門寺 標高769m
 2007.8年ころ、急に蛍が現れたと言う。上流にゲンジ蛍の発生地があり、孵化幼虫が餌不足で浮上沈下を繰り返し下流に流され、偶然ここに定着したと思われる。支流の支流になる。
 樹木や低木が少なく、雑草は刈り込まれて湿度が低く、舞い上がることがほとんどないので、測定し難い場所。
 西日本型と中日本型が同居している。
 小さな河川で、一方の壁面はコンクリート、他方は、板を杭止め、板はかなり朽ち隙間ができている。この隙間使って土中に潜り羽化していると思われる。
 地形的に樹木などの邪魔物が無く、容易に捕獲でき、それが原因かはわからないが、絶滅してしまった。保護活動をしておけばよかったと思う。この河川上流の蛍を増殖放流すれば、復活は可能。
 
        測定結果
2010年 
 6月22日 3.2
 6月28日 2.8 3.0
2011年
 6月27日 2.2 2.3
2012年
 6月29日 2匹光っていたが舞わず、測定不可。
2013年
 6月28日 7月6日 蛍確認できず、絶滅か?
2014年
 6月27日から数回調査したが確認できず。絶滅したと思われる。

   左は中央線、立木がない     壁面は朽ちている

     





      諏訪市田辺ゼギ 標高770m
 宮川から分流した農業用の人工水路。幅1~2mくらい、流れは比較的早い。かなり古く、壁面は板を杭で止めたもので朽ちて崩れているところがある。
 水路沿いに桜並木があり、毎年蛍発生時期に桜の消毒が行われ、翌日は蛍がいなくなるが、2.3日後再び現れ絶えることなく毎年発生している。
 もともとこの地に生息していたゲンジ蛍。
水路沿いに人家があり、保護活動が無いが絶えることなく毎年発生。近年見学者が増え、捕獲しやすい地形なので、保護活動をしないと絶滅の恐れがある。

       測定結果
2008年
 6月24日 西日本型
 7月07日 中日本型
 7月08日 中日本型
2009年
 6月21日 中日本型 
 6月23日 西日本型 中日本型 東日本型
 6月24日 西日本型 中日本型
 6月25日 中日本型
 6月26日 中日本型
 6月27日 中日本型(3.4
 6月30日 中日本型(3.0
 7月05日 東日本型(3.6 4.0
 7月10日 4.0
2010年
 6月22日 3.2 
 6月28日 3.0 3.1 3.2
2011年
 6月27日 2.0 2.4 2.5
 7月05日 3.3 3.4 3.5
 7月08日 2.5 2.7
2012年 
 7月02日 3.4 
 7月08日 3.5 
2013年 (雨でほとんど測定ができず)
 6月24日 4.2 4.3
 6月27日 3.5 3.6
2014年 (雨でほとんど測定ができず。発生数が少ない)
 6月25日 4.0 4.2  

 上流方向写真上側に取水口     下流方向     壁面は板張りで朽ちている

       

 2013年と14年の蛍発生期間は雨降りが多く、特に14年、舞ったのは初めの2.3日だけだった。はたして交尾し産卵したのか心配だ。来年は2012年生まれの三齢幼虫が親になるので絶滅は心配していないが、来年も雨降りが続くと再来年、激減しないか?絶滅しないかと心配だ。
 河川の壁面が板張りでかなり傷んでいる。やがて修復工事が行われるだろうが、コンクリート壁のような蛍が絶滅する修復は避けてほしい。
2015年
 6月17日 確認できず
 6月19日 4.9 気温が低い 
 6月20日 2匹確認 大雨の後 飛ばず
 7月01日 数匹確認したが舞わず
 7月05日  数匹いたが舞わず。交尾中2組確認1.4



      諏訪市地蔵寺 標高800m
 発生数は少ない。上流に温泉が流出、冬でも水温は16℃を維持する。夏は19℃。(年間水温グラフを参照) 
  西日本型と中日本型が同居

       測定結果
2008年
 6月24日 西日本型
2009年
 6月21日 中日本型 
 6月23日 中日本型
 6月24日 中日本型(3.4
 6月27日 中日本型(3.4
2010年
 6月17日 3.4  
 6月19日 3.4
 6月21日 3.4
 6月23日 3.4
 6月24日 3.4
2011年
 6月27日 2.0 2.1 2.3
 7月05日 3.1 3.2 3.3 3.4
2013年
 6月27日 蛍は確認したが舞わず。
2014年
 7月05日 蛍は確認したが、舞わず測定不可
 7月11日 蛍は確認したが、舞わず測定不可

        小さな人口池      下流方向

       

2015年
 7月02日 確認できず
 7月10日 確認できず



        岡谷田中小学校裏(標高764m)
 人家の間を流れる小川風の河川。水は綺麗でバイカモ.クロモ.ササバモなどが自生している。
 常時住み着いていないようで、たまに発生するようだ。下流に蛍発生地があるとのことで、終齢幼虫が遡上し、ここで親になったと思われる。
 樹木が無いため、舞い上がることが少なく、測定ができないことが多かった。
 2013は発生数が少なく、蛍を確認したものの、舞わないため測定ができなかった。
 2014年は発生せず。代わりにヘイケ蛍がたくさん発生していた。
 
       測定結果
2012年 
 6月23日 4.2 (低温でほとんど舞わず)
 6月25日 3.6 3.7
 6月27日 3.4 (舞う個体少ない)
2013年
  数が少なく、舞わないため測定できず。
2014年  数回調査に出かけたが、確認できず。代わりにヘイケ蛍がたくさん発生していた。
 絶滅したかと心配したが、あとで下流に蛍発生地があると聞いた。幼虫の遡上で再び発生する可能性があるので、調査は続けたい。
2015年  
 6月18日 ヘイケ確認
 6月26日 ヘイケ多数確認



     富士見立沢 (標高1100mくらい)
 石積で作られた古い河川。人手が加わっていない自然のままの蛍発生地。
 中日本型と東日本型、その中間型が多数同居する典型的な長野県スタイル。発生数が多い。
 残念だが、河川改修工事で2013年絶滅した。

       測定結果
2009年
 6月21日 東日本型
 6月23日 中日本型
 6月30日 3.4 3.6
 7月04日 4.0
 7月08日 3.4 3.6 4.0
 7月13日 3.0 3.2
2010年
 6月28日 3.4 3.5
 7月02日 3.5 3.6
 7月08日 3.5
 7月16日 3.2
2011年
 6月29日 2.8 2.9
 7月08日 3.3 
 7月13日 3.2 
2012年(数年前から、下流域から上流に向かって河川改修工事が行われていたが、ついに発生地に至った。発生地の半分は手付かずだが、数匹を確認したのみ)
 7月08日 3.5 3.6 
2013年 河川改修工事終了。絶滅。真に残念だが再び蛍を見ることはなかった。
2014年 発生なし

幼虫が育っていた河川が改修工事で右写真に変わった。羽化場所も同じように変わった。絶滅

     




      原村宮川上流(標高1150mくらい)
 部分的に手直しした自然の河川で,発生地としては、比較的大きな河川。幼虫の遡上を阻止する大きな滝が無いため、広範囲に蛍が発生する、自然発生地。発生数は多い。河川を挟んで、一方は樹木が茂り、他方は道路と田んぼが続く。
 西日本型、中日本型、東日本型が同居する典型的な長野県スタイル。しかし近年、西日本型が見られなくなった。

       測定結果
2008年
 7月01日 西日本型
 7月05日 西日本型 中日本型
 7月11日 東日本型
2009年
 6月21日 東日本型
 6月23日 中日本型
 6月25日 東日本型 
 6月30日 3.5
 7月05日 4.0 4.4
 7月08日 3.4
 7月16日 3.0
2010年
 6月21日 東日本型 
 6月23日 中日本型
 6月25日 東日本型
 6月28日 3.6
 6月30日 3.5
 7月02日 3.5 3.6
 7月05日 4.0 4.4(肌寒い)
 7月08日 3.4 3.6
 7月16日 3.0
2011年
 6月29日 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9
 7月06日 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8
 7月08日 3.3 3.4
 7月13日 2.8 2.9 3.0 3.1(上流2.6
 7月16日 3.1 3.2 3.4 
 7月17日 2.8
2012年 
 7月02日 3.7 3.9 4.0 4.1
 7月05日 3.5
 7月11日 3.4
2013年
 6月27日 4.6
 7月04日 3.5 3.6
 7月05日 3.2
 7月08日 3.2 3.4
2014年
 7月05日 4.3
 7月06日 3.8 4.0 4.1 4.2 
 7月07日 3.8 3.9      
 7月11日 3.6 3.5 3.6 3.7
 7月16日 3.5

 中日本型と東日本型、その中間型が同居する長野県スタイル。蛍発生期間が長く、20日を超える。発生期間と点滅秒数を正確に調べる価値はある。
 ゲンジ蛍発生後、遅れてヘイケ蛍が発生する。(通年ゲンジ蛍がいなくなった後ヘイケ蛍が発生している)。しかし、今年はほとんど同時期に、発生していた。
2015年
 7月1日 4.6  3匹確認 発生初期
 7月2日 4.2  数が少ない



      志賀高原石の湯ゲンジ蛍(長野県下高井郡山ノ内町)(標高1600m)
 標高1600m、日本で最も高いところに棲むゲンジ蛍、天然記念物に指定されている。温泉が流入しているので、年間を通して水温が高く、蛍発生期間が長い。
 2.6秒~4.2秒までの複数タイプが同居しているので、同時明滅は見られないが、数匹が集まって同時明滅しているのは時々見かける。
 標高が高いためか、西日本型は観察できなかった。これは、諏訪市角間新田とよく似ている。
 
          測定結果
2010年
 7月21日 2.6 2.7 2.8 3.1 3.4  
2012年
 8月1日  2.7 2.8 2.9 3.0 3.1 3.2
 8月22日 2.9 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4
2013年
 8月28日 4.2 ( 数匹確認、低温でほとんど飛ばない、飛んでも点滅なし、1匹測定)
2014年
 7月30日 2.9 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 4.2 (気温が低く、舞いが悪い)
 8月20日 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 (3.4が多く同時明滅が部分的にあり)
2015年   
 7月23日 2.3 2.4 2.5 2.6 



      池田町花見蛍の里(長野県北安曇郡池田町大字会染花見)
 樹木が茂る小高い山と平地の境に造られた人工水路、元々の河川を太いパイプで地下に埋め込み、その上に造ってある。
 山から流れる綺麗な水を使用しているため、水に栄養分がなく、カワニナが育たないと思われ、カワニナを毎年放流?
 点滅秒数から、この地に自生していた蛍とは考え難く、西日本型を導入し定着させたと思われる。ただし2014年測定した2.9秒はよく解らない?

          測定結果
2010年
 6月30日 1.8 2.0 (同時明滅確認 同一タイプと判断、西日本型を導入し定着させたと思われる)
2013年
 7月03日 1.8 1.9 2.0
2014年 
 6月30日 2.0 2.1 2.2 2.9

     

2015年
 629 1.9 2.0 2.1 2.2 2.3 2.6   







      白馬村 神城内山スノーハーブホタルの里  
 自然を整備したゲンジ蛍とヘイケ蛍の発生地。点滅秒数から、地元の蛍を保護繁殖していると思われる。
 残念だが、調査は一回のみ。

       測定結果
2010年
 7月7日 3.4 3.5 3.6 



      下伊那郡高森町やまぶき天伯峡 
 手が加えられた石済みの河川。河川を挟むように樹木が立ち並ぶ。
 この地に生息している蛍と思われる。 

       測定結果
2012年 
 6月27日 3.3 3.4 3.5 3.6
2013年
 6月30日 2.6 2.8 3.0 3.2 3.3
2014年
 6月28日 2.3 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 3.0 3.1
2015年 
 6月20日 2.7 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 数が少ない 部分的な同時明滅有



      上田下塩尻桜づつみホタル 標高420m
 昔ながらの石積みの水路、生活廃水が流入しているのか、水は幾分白濁,泡立っている。
 もともとこの地に生息している蛍と思われるが、保護活動が行われている。
 特定な場所に集団発生させるため、水路の一部にコンクリートマスを設け、終齢幼虫の遡上を阻止している。
 年によって秒数が異なるのはなぜか。
  
       測定結果
2010年
 6月23日 2.9 3.0 (同時明滅あり。)
2013年
 7月01日 2.4 2.5 2.6  
2014年
 6月14日 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 4.0

石済みの小さな河川集団発生させるための枡(水面に段差をつける)が作られていた

     

2015年
 6月19日 3.2 3.4 3.6 3.7
 6月24日 2.6 2.8  大雨後 数少ない



      塩尻みどり湖 標高838m
 みどり湖に流入する石垣の河川と、小さな人口人口河川の2か所。この地に生息する自然のままの蛍。
2010年
 6月30日 2.5 2.6 2.7 2.8
2014年
 6月29日 2.7 3.0 3.1 3.3 3.4
2015年
 6月21日 3.4 3.5 3.6 3.8 3.9 4.0  小雨 数匹で同時明滅
 6月28日 3.6 3.7 3.8 4.1 4.2 4.4  強風
 6月29日 3.0  測定が11時過ぎで舞わなかった

 



      崎インター横  
 自然手付かず
2015年
 6月10日 3.3 3.4 3.5 
 6月19日 4.0 4.2


        以上 調査報告でした。今年の調査開始が近ずいて来ました。
        2015年の点滅秒数が2013年以前の数値に戻るのか、あるいは
        異変が続くのか、更なる異変が起こるのか。
        調査結果は遂次、お知らせします。





            調査にあたって

             点滅秒数測定方法の変更
 ゲンジ蛍の点滅秒数は、西日本型2秒、中日本型3秒、東日本型4秒の3タイプに分けられていることから、調査開始から約2年間、点滅秒数測定値のコンマ一桁を四捨五入し、西日本型、中日本型、東日本型のいずれかに当てはめていた。しかし、調査2年目(2009年)の後半、長野県のゲンジ蛍はコンマ一桁が重要な意味を持っていることに気が付き、その後はコンマ二桁を四捨五入、コンマ一桁までの秒数を記録することにしました。

             観察地の選び方
ゲンジ蛍は、河川の長い距離に発生する場合と、限られた範囲に大量発生する場合があり、調査は大量発生している場所を主に行ないました。

             調査方法と結果
 点滅秒数の測定方法
   測定方法と測定時の注意点
* 蛍は舞っている間、点滅を繰り返すことから、舞っているホタルを測定対象とした。
* 点滅5回の秒数を測定、その平均値を取った。(植物などに止まって点滅する蛍の点滅回数は、3~4回のため、測定しない)
* 一か所の測定は10回、同一個体を再測定しないよう注意する。10回とも測定結果が異なった時は、測定を続ける。
* 土繭から出て初飛行の蛍は、点灯したままの個体が多く、点滅しても不安定で点滅秒数が正常値と異なることから、採用しなかった。
* 大雨の直後や、捕獲された後など、蛍が興奮していると思われる状態では、1.6秒と早い点滅を連続することがあるが、これも不適当。
* 肌寒く感じるような、気温が著しく低い時、東日本型タイプは、点滅秒数が長くなる傾向があるので、低温時の点滅秒数は低温と記すことにした。(通常東日本型は4秒前後だが、気温が低いと5秒前後と長くなることが多々ある)
* 長野県では秒数が異なるタイプが同一河川の同一場所に生息していることが多く、これこそが人為的な手が加わっていない自然の姿と思われる。一タイプだけが生息する地域があるが、これらは、絶滅状態にある数少ない蛍を、人的に増殖した場合や、他地域から導入した蛍を定着したなど、人の手が加わっていることが多い。それはそれなりにデーター的価値があると判断し、数値を残した。また、それらが他地域の個体か、その地域の個体かの判断は難しく、勝手に決めることはできない。

             自然発生地の調査結果から (長野県の全体的傾向)
 中間型が数多く存在する長野県産ゲンジ蛍は、西日本型、中日本型、東日本型の3タイプのみでなく、その中間型が多数存在する。

   同一河川に点滅秒数が異なる蛍が同居する
* 同一河川の同一場所、同一時期に、点滅秒数が異なる蛍が飛遊するが、これらは他地域から移植したものではなく、自然の姿と思われる。(長野県スタイル)
    
   自然環境下で点滅秒数が異なる♂、♀は交尾しないのか
 同一河川の同一場所に、点滅秒数が異なる蛍が同居することから、交雑するのではと心配したが7年間の調査で、異変を全く感じなかった。ゲンジ蛍は点滅秒数が異なる雄雌は、交尾しないとする報告があるが、それを裏付けているのか? ただし狭い飼育ケースなどに閉じ込めた状態での交尾実験は行っていないので、絶対に交尾しないと断言できない。

   無数のタイプが生息する地域ほど人為的な手が加わっていない   
点滅秒数が、一般的に言われる3タイプだけでなく、その中間型が無数に見られる長野県は、日本全土から見ると大変珍しい地域と言える。たとえば志賀高原石の湯は標高1600m、日本で最も高いところに生息するゲンジ蛍で、天然記念物に指定されている。この場所に他地域の蛍を放すとは考え難い。2010年7月21日の調査では、2.6秒、2.7秒、2.8秒、3.1秒、3.4秒を確認した。2012年、8月1日と8月22日の2回調査したが、ほぼ同じような結果を得た。ここは水温の関係から発生期間が1ヶ月以上と長いことでも知られているが、その期間中を通して調べれば、さらに多くのタイプが確認できるかもしれない。

   点滅秒数0.9秒のゲンジ蛍に遭遇
箕輪町恩沢川蛍の里で0.9秒のゲンジ蛍を確認した。蛍は大雨の直後や、捕獲された後など、興奮していると思われる状態で1.6秒と早い点滅を連続することがあるが、それはすべて植物などに止まっての点滅である。しかしここで見た蛍は舞っている状態であるから、正常な点滅といえる(捕獲して調べていないので、ヘイケ蛍と疑われても反論はない)。地元の人の話しでは、繁殖の一部を人為的に補っているとのことだが、それが点滅秒数に異変をもたらす原因になったのかはわからない?
   
   同時明滅は1タイプ同士だから起こり得る現象
 このように無数のタイプが同居する地域では、同時明滅は起こり難い。ただし同一秒数の個体2.3匹が遭遇したとき、彼ら同士で同時明滅が見られる。

   親が多数集まっている場所が、羽化地とは限らない
 蛍は湿度を敏感に感じ取り、湿度の高いところを選んで飛んでいる。川沿いに飛遊するのは、水面上の湿度が高いからである。滝の周辺に集まるのも湿度が高いからである。そのため発生地とは関係なく湿度の高いところに集まることがあり、発生地と勘違いし易い。こういう場所にいる蛍は、ほとんどが雄で雌は見つからない。羽化地か否は河川の構造や形状を考慮したい。

   点滅秒数が異なると、羽化時期にずれが生ずるのか?
 同一河川の同一場所に点滅秒数が異なる蛍が発生している場所では、発生期間が長くなる。
通常ゲンジ蛍の観賞期間は10日から2週間だが、このような場所では、3~4週間に及ぶことが多い。
これは、成虫の寿命が長いのではなく、上陸日のズレ、あるいは点滅秒数による羽化日数の違いがあると思われるがはっきりしたことは解らない。

   集団発生する場所には、滝など終齢幼虫の溯上を阻止する河川の構造がある。
 蛍が集団発生している場所には、河川水位に段差が生じる滝や人為的な枡がある。この下流域が発生地となっている。理由は終齢幼虫の溯上にある。溯上してきた幼虫がここで止められてしまい、次々溯上して来た幼虫の溜まり場となる。上陸時期を迎えると、一斉に上陸し、その場所で親になる。これが集団発生のメカニズムだ。緩やかな滝は、登ってしまい溯上阻止の意味を成さない。効果が大なのは、枡を作り、其の内部で、太く飛び出たパイプを使って段差をつける方法だ。これだと段差は僅かでも、溯上を食い止める効果が大きい。


            水槽飼育から
   産卵は湿った湿気の多いところを選ぶ
 小型のケースに湿ったミズゴケと乾いたミズゴケを入れ、そこに交尾が終了した♀を放し、どちらに産卵するかを調べると、湿ったミズゴケに産卵した。ウレタンやティッシュも同様湿った方に産卵した。

   産卵は日を開け、3から4回に分けて行われる
 交尾した番を隔離飼育し、♀の体重を毎朝電子天秤で1/1000gまで測定した。産卵後は体重が減り、産卵床を調べると卵が確認できた。その結果、産卵は3回から4回に分けて行われていた。3回の場合、初産は交尾2~3日後、全卵の約60パーセントを産卵、その2.3日後25パーセントを産卵、さらに2.3日後15パーセントを産卵していた。未産卵の♀は舞わないが、1度目あるいは2度目の産卵後、体が軽くなり舞うようになる。この♀が他の河川へ飛来、卵を産み生息地を広げると思いたいが、現実的にはかなり薄いと考えられる。なお体重測定に当たって、親への給水は水を一定に染込ませた発砲ウレタンを入れるだけとし、霧吹きなど体重に外的変化を及ぼす可能性がある行為は避けた。飼育容器内部の湿度は必要だが、上げすぎで死亡したことがあるのでご注意を。

   交尾しない♀は産卵しないのか?
 幼虫を水槽羽化させたとき、運悪く♀だけで♂が生まれないことがあるが、このときの♀は交尾できず、腹に卵を持ったまま死んでしまう。産卵は交尾と関係があるのだろうか。

   卵は水中でも成熟、孵化する
 卵は乾燥に弱く、時々霧吹きで湿り気を持たせなければならないが、魚の卵と同じように水中で孵化実験を行った結果、問題なく孵化、その後の成長にもなんら問題はなかった。

   卵も夜行性か?
 産卵した卵は薄いクリーム色をしているが、孵化数日前になると黒色化してくる。この卵を朝晩写真撮影して比べると、黒く進行するのは夜だけで、日中は黒色化の進行が見られない。これは夜行性になっていることを意味する。孵化は外敵が活動を停止する夜間行われるが、その準備なのか。

   孵化した幼虫は下に向かって歩く
 卵から孵化した幼虫は、決して上に向かって歩くことはない。下方に向かって歩き、行き止まると、はねるようにして飛び降りる。こうして最短時間で水中に到達する。窪みに入った幼虫は歩いて窪みを登ることはしないようで、死すことが多い。幼虫の命は生みつけられた卵の場所で決定してしまうようだ。

   孵化して間がない幼虫が発光するのはなぜ?
 3.4齢になると尾の左右に白色をした発光器官が現れるので、発光しても不思議はないが、孵化して間がない発光器官が外部から確認できない幼虫が発光するのはなぜだろうか。

   幼虫の天敵、水ダニ
 幼虫の天敵に水ダニがいる。3.4齢になった幼虫が毎日毎日死亡、全滅したことがある。顕微鏡で調べたところ水ダニが寄生していた。水ダニの浸入経路を探そうと孵化したばかりの幼虫から調べた。なんとこの幼虫に孵化して間がない水ダニが寄生していた。このことから水ダニは終齢幼虫に寄生したまま上陸、土繭内でも寄生、脱皮しサナギから親蛍になった際も親に寄生し地上に出てくると思われる。この段階で水ダニは親になっていて、親蛍の産卵にあわせて産卵、蛍の孵化より早く孵化し、その後孵化した幼虫に寄生し水中に入ると思われるが、実際はわからない。
     
   水ダニを駆除する薬品があったが
 幼虫を殺さず水ダニを全滅させる薬品を薬品会社の協力を得て探した。幸いに40ppm10日間の薬浴で駆除できることが解ったが、薬品名は控えさせていただきたい。薬浴を4日間行うとダニの幼虫は死滅するが、しばらくすると仔ダニと中ダニが現れる。仔ダニは足が3対だが、中ダニは足が4対、仔ダニより大きく僅かな毛が生えている。卵やサナギに薬は利かないと判断、薬浴日数を10日に延ばしたが、水ダニは再発した。薬浴した蛍の幼虫は其の後も生き続け、薬浴の影響は見られなかった。ミズダニの完全駆除は難しい。
 (ミズダニ類は雌雄異体。卵から6本脚の幼虫、8本肢の若虫を経て成虫になる。水生昆虫の成虫、あるいは幼虫に寄生するとの報告がある。)

   エピスティリスも害を及ぼす
 幼虫に着生する生き物はいろいろいる。中でもエピスティリスは水ダニに次いで厄介だ。エピスティリスは幼虫を覆いつくすほど幼虫の体表に寄生し、幼虫を死滅させることがあるが、幼虫から直接栄養分の吸収は行っていない。水中の微生物もしくは栄養分を吸収していることから、水を無栄養に保てば、自然と消滅する。水槽飼育では、幼虫が溶かしたカワニナの肉汁が水中に漏れだし、直接もしくは間接的に栄養源になっているようだ。肉汁が水中に漏れないよう、幼虫の飼育数を多くするか、水替え頻度を高くすること、あるいは水をかけ流しするのが好結果を生む。

   孵化した幼虫はコロニーを作るが、自然界では?
 隠れ場所がない水槽で孵化した幼虫は、幼虫同士が絡み合ってコロニーを作る。
小石などを入れ、隠れ場所を作るとコロニーを解消し単独で生活をする。コロニーのまま飼育するとストレスがたまりやすいのか、死亡率が高くなるようだ。水槽飼育では、たくさんの隠れ場所を用意するのが望ましい。

   孵化から一ヶ月半の間、水面に浮上する幼虫が現れる
 孵化した幼虫は水面に落ち、やがて水底に沈む。しかし二,三日すると水面に浮く幼虫が現れる。原因は餌不足だった。餌が少ないもしくは与えないと、丸まって水面に浮いてしまう。水面を波立てると沈む。こう言ったことは自然界でも起こっていると思われる。
ゲンジ蛍の大きなメスは約1000個の卵を産むと言われている。ほぼ同一場所に産み付けることから、孵化した幼虫は過密状態で、それを養うだけの稚貝(生まれて間がないカワニナの赤ちゃん)は居ない。そんな時、餌不足の幼虫は浮上し下流に流れ沈下、餌を求めて食いつけるまで浮上と沈下を繰り返えし、下流に広がっていくと考えられる。餌場を広く取ることで多くの幼虫が生きていける。
  一方、ヘイケ蛍は、このような現象を見た事が無い。産卵数が少ないことや、1匹の幼虫が食べる餌の量がゲンジ蛍に比べかなり少ないことや、動物性蛋白質ならほとんど食べるから、餌不足が起こり難い。ヘイケ蛍はゲンジ蛍のように、広範囲の餌場を必要としない。ヘイケ蛍は生まれたその場所で育ち親になっていると思われる。そのため終齢幼虫の遡上はないし、滝などの遡上を阻止するような地形が無くても集団発生している   

   小さな幼虫は小さなカワニナしか捕食できない
 カワニナの捕食は、幼虫の長さと関係があり、幼虫と同等の長さのカワニナまでは捕獲できるが、それより大きなカワニナは捕食できない。捕食するとき、カワニナの貝に体を巻きつけ固定させてから捕食行動に入るが、大きなカワニナは、貝径が大きく巻き付くことが出来ないため、捕食行動に入れない。

   カワニナしか食べないと言われているが、それは?
 マグロの切り身を与えたら食べるし、ボイルしたホッキ貝切り身はよく食べる。貝類なら剥き身にして与えれば良く食べる。ただしシジミのように外套幕で囲まれている肉は、外套幕が消化液で溶けないため、食べることが出来ないが、外套膜を取るか輪切りにし肉を出すと食べる。
小さな幼虫は、肉が柔らかい小さな貝でないと、消化液で溶かすことが出来ないようで、食べが悪いことがある。
活タニシは捕獲し難いようで食べないが、剥き身にすればよく食べる。カワニナしか食べないと言われるのは、カワニな以外の貝は捕獲し難いということのようだ。

   高水温に弱い
 幼虫は、水温が25℃を超えると餌食いが悪くなり、28℃を超えると食べない幼虫が多くなる。

   幼虫は成長に差が出る
 孵化後、4.5ヶ月で終齢サイズまで成長する幼虫がいる反面、ほとんど生長していない幼虫もいる。成長が遅い幼虫は2年性、3年性の幼虫になると思われるが、子孫を残す工夫なのかな。しかし、1年で終齢になっても、2年、3年たって親になる個体がある。

   幼虫のカワニナ捕獲は犬も歩けば棒にあたる状態?
 幾種類ものうまみ成分(アミノ酸)で、幼虫の寄り具合を調べたが、寄り付くうまみ成分は探せなかった。幼虫の捕食行動を観察したところ、直接カワニナに当たらない限り捕獲行動はとらない。1mmでも離れていれば、素通りしてしまう。

   捕獲したカワニナを1匹だけで食べるのは吸収効率が悪い
 水槽飼育で1匹の幼虫がカワニナを捕獲し、やがて消化液を出し食べだすと、臭気が漂いだす。その匂いはゲップに似ている。これは幼虫が食べるために溶かした、カワニナの肉汁の匂いで、かなり強力である。肉汁が水中に溶け出すことは、幼虫の吸収効率を悪くしているが、そうならない自然の力がある。

   肉汁の匂いで幼虫が集まる?
 うまみ成分では拠り付かなかった幼虫だが、肉汁の匂いに反応し、動き出す。やがて臭いの発生元にたどり着き、カワニナの貝口に頭を突っ込み食べだす。


   1匹が捕獲したカワニナを、多くの幼虫食べることで、吸収効率が上がる 
 1匹の幼虫が捕獲したカワニナに幾匹もの幼虫が集まり、貝口に頭を突っ込み、食べだす。匹数が増えると貝口を塞ぎ肉汁は漏れ出なくなる。こうなると、幼虫の吸収率が高まり、無駄が減少する。

   小さな幼虫が恩恵にあずかる
 大きなカワニナを小さな幼虫は捕獲できないが、大きな幼虫は捕獲できる。やがて肉汁が水中に漏れ出すと、小さな幼虫も集まり、肉汁を吸う。大きな幼虫がいることで小さな幼虫は餓死することなく成長できる。大きな幼虫が小さな幼虫を助けているように見えるが、それを意識してやっているのではない。

   幼虫団子には意味がある
 活カワニナを捕食するとき,貝口に頭を突っ込める幼虫匹数には限界があり、それほど多くない。剥きカワニナの場合、剥き身の周りを幼虫が取り囲むことから、幼虫数はすこぶる多くなる。それだけではない。取り囲み消化液を出し吸収を始めた幼虫の間から漏れる肉汁を吸おうと、幼虫同士の隙間に頭を突っ込む幼虫が現れ肉汁を吸う。肉汁が漏れる場所に次々頭を突っ込む幼虫が現れ、剥き身全体を幼虫が覆い、あたかも幼虫の団子が出来るが、餌を無駄にしない効率が良い食べ方だ。
   
   意味なく発光しているわけではない
 幼虫の発光は餌などを求め、歩いているときに見られる。発光は外敵に対する威嚇と言われるが、歩きを止めると発光は停止する。親の点滅とは異なり、しばらく発光し消え、再び発光する。点滅と言えるかどうかは別として親と異なり発光時間がすこぶる長い。東日本タイプと西日本タイプでは違はあるのだろうか。
 親は舞っている間中、点滅を繰り返すが、幼虫は歩いているとき発光時間がかなり長い点灯をする。歩かないとき光るのはまれである。

   終齢幼虫は遡上する
 孵化後、餌を求めて下流に移動した幼虫が終齢になると、遡上する。下流に流されたり、逆に遡上することは蛍の生活範囲を広げ蛍発生地を増やす役割がある。

   終齢になると水面付近で過ごすことが多くなる
 水中の岩陰や隙間などで身を守って生きてきた幼虫が、終齢になると、水面まで上がってくることが多くなる。そして水面上に頭を突き出し、何かを感じ取っているように見える。外気温や湿度を感知していると思われる。あたかも上陸を伺う前調査のように思われる。

   終齢幼虫が上陸する条件
 自然では、湿度が高い夕方、暗く成りだしたころ、発光しながら上陸する。上陸といっても、地表面まで上がることはまれで、石垣などの隙間に入り込んでいく。
 水槽の場合、終齢幼虫を羽化水槽に放した後、霧吹きをし、蓋をして(蓋の一部が開いていれば酸欠は起こさない)黒布を掛け暗くすると良い。

   土中湿度が高いところを選ぶ
 石垣(目地をかってない)の裏側には水が染み込んでいるが、水面より高くなるに従い土中湿度が低くなる。幼虫は比較的土中湿度が高いところを選んで潜っている。

   土繭は口から透明な液体を出し、体をくねらせ壁面に付けて作る
 適した土中湿度の場所を探した幼虫は、其の日から体をくねらせ空洞を作るが、頭を上にして作る事が多い。口から液体をだし、口先に水滴のように丸め、結果的に空洞壁面に満遍なく体をくねらせながら塗布する。この液体は土を接着、固める働きをしていると思われ、壁面の厚さ3から4mmが硬くなり土眉が作られる。

   土繭内部で過ごす日数は長い
 2から3日で土繭は完成する。幼虫は其の中で、長期間を過ごす。ほとんど動かないように見えるが、朝晩写真撮影して比べると動いているのが解る。

   土繭を作ってもすぐにサナギにはならない
 長期間土繭で過ごした幼虫は、突然白色のサナギになる。

   サナギになるのに30分とはかからない
 脱皮してサナギになるが、意外と早くてびっくりする。さっきまで黒色の幼虫だったのに、サナギに変わっていたことが多々ある。

   幼虫も発光するが、サナギも発光する
 土繭内部で幼虫は発光するが、サナギも発光する。

   サナギになると約1週間で親になるが(25℃くらい)、約3日間、土繭内部で過ごす
 白色のサナギは、やがて部分的に黒味を帯びるが、真っ黒になることはない。2.3日すると脱皮して親になる。しかし、親になったからといって直ぐ地上に出てくることはない。3日以上経過した後,地上に出てくる。この間発光するが、正常な点滅はしない。
  

   上陸後のゲンジ蛍は、ほぼ同時進行し親になる
 終齢幼虫を強制上陸させた場合、親になる個体と、ならない固体があるが、親になる固体はほぼ同時進行して親になる(1.2日の差はある)。ヘイケ蛍を強制上陸させた場合、一斉に親になることはなく2ヶ月近くの差が生じる。これは上陸後、土繭を作り始める日数が、ゲンジは1.2日であるのに対し、ヘイケは1日~約1.5ヶ月の差が生じるからである。ヘイケの発生期間が約2ヶ月と長い原因の一つに、これが上げられる。

    終齢幼虫になったからと言って、その年に親になるとは限らない
 卵から育てて約一年、3㎝を超える大きさになった終齢幼虫を4月、整備した人口水路に放流。2か月後、放流数の3分の1が羽化し地上に現れた。残念ながら近くの水銀灯に飛んで行ってしまい、3日後にはいなくなった。(幼虫の放流はその後、行なっていない)。翌年、放流数の4分の1が舞ったが、水銀灯に吸い取られるようにいなくなった。3年目も2年目と同じくらいの数が現れた。しかし4年目は現れなかった。親になっていたのは放流した終齢幼虫と思える。仮に産卵していたとすれば4年目も現れてよいはずだ。終齢幼虫だからその年親になるとは言えず、2齢.3齢幼虫は遺伝子に組み込まれていると考えるべきなのか?

    土眉内部を観察するには
 土眉の中を見ることは難しい。水槽を使って上陸させたとき、幼虫がガラス面にそって潜り、土眉を作ればガラス越しに土眉内部を観察出来る。方法は至って簡単である。
 水槽内部に土(私は極細の赤玉土)を敷き、表面全体を手の平で抑え固め、厚さ5㎝程度にする。ガラス面に沿った幅1㎝程度をピンセットや太めの針金で深さ2.3㎝までを耕すように柔らかくする。表面を平らにしたら直径約3㎜の棒でガラス面にそって深さ3㎝位の穴をあける。間隔は2㎝以上が良い。終齢幼虫を放せば、土が柔らかいガラス面にそって作った穴に潜り土眉を作る。ガラス面越しに土眉内部を見る事が出来、容易に生態を観察ができる。水槽の底は水が常時溜まっている状態にする。ガラス面にそって水位計を設置おけば土中水位が観察でき水位の調整ができる。土の厚さは約5㎝、土中水位は0.5㎝位が良い。上げ過ぎると土表面で蛹になることがあるが、湿度に注意が必要である

    ガラス面に作った土眉と幼虫            蛹に変身 どうやら2匹入っているようだ 

       


 ヘイケ蛍は、同時に上陸し土に潜っても、羽化に2ヶ月くらいの違いがでるが、ゲンジ蛍はほぼ同一進行し羽化する。羽化しても.3~4日は土眉内部で過ごす。体内の臓器などが完成するのを待っているのだろうか。



           カワニナの飼育繁殖から

    水深が深い水槽は繁殖が悪い
 水槽飼育では浅い水槽を使った方がよく殖える。たとえば高さ30㎝の水槽ではよく産仔するが、45㎝を超えると鈍る。

    産仔温度の境界線は17.5±1℃にある
 水温は19℃以上が良い。17℃以下だと産仔しない。

    ジャガイモやサツマイモを好む
 餌は観賞魚飼料でも良いが、ジャガイモは特によく食べる。自然界ではセリ(台湾ゼリを含む)を好んで食べている。フキの葉も良く食べる。好む餌が無くなる寒期、枯れた葉にたかって食べているが、好きで食べているとは思えない。

    観賞魚飼料は、ヒルが繁殖しやすくなる
 ヒルの餌はタンパク質、観賞魚飼料はタンパク質が主体のため、カワニナに付着して侵入したヒルはすごい繁殖力をみっせる。

    ヒルの駆除は、酸性にすると良い
 ヒルはpH 3.0に下げると、死亡するので、酸性水の薬浴が効果的。カワニナは短時間なら死がない。時間は数分で十分。(pHメーターは個差があるので、少し高目から徐々に下げ実測で判断してほしい。私はpH 2.7で5分間薬浴、その後水洗いてヒルを流し落としている)なおpH 2.7ならミズムシ(昆虫)は生きている。(ミズムシは、カメムシ目ミズムシ科に属する水生昆虫で、藻類などを食べるおとなしい虫で浄化効果が高い)
 
    底泥には注意
 底泥が一面に溜まると稚貝が育たなくなる。泥中に入った稚貝は脱出できなくなりやがて窒息する。細かい砂を敷き詰めた水槽でも同様の現象が見られる。

    多頭飼育は産仔しなくなる
 数多くのカワニナを飼育すると(多頭飼育)、産仔率が悪くなる。
 
    カワニナの寄生虫
 カワニナの貝に寄生、カワニナの頭部によく似ていて間違え安い。貝に穴を開ける。

    開口を閉じているのにカワニナに見える         拡大した貝にたかる寄生虫 

     





    ゲンジ蛍発生地河川の年間水温





 測定河川は6ヶ所、笹原(空色)は蛍発生地以外の河川(夏場の水温が低く、カワニナの産仔温度に達しないので、幼虫を放流しても定着は難しい。このような場所ではカワニナの永続的な放流が必要)。
 最低水温は2月、2℃以下であったが、幼虫は何らかな方法で越冬している。最高水温は8月、25℃を超える場所はなかった。
 
   地蔵寺の水温(茶色)からカワニナの産仔水温が解る
 グラフ中、茶色の地蔵寺は、地下水の関係から年間を通して16~18℃と変化が少ない。ここでカワニナが繁殖している。カワニナの大きさを調べるとS,M,Lなどに分けられることから、特定な時期に産仔していることになる。となると16~18℃の間に仔を産む最低水温があり、17℃前後であることが予想できる。水槽で調べたときも、同じような結果だった。